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2013年 05月 26日

4月28日(後)@フランケン地方出張記2013年春

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「ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau)の木が、フランケンの地に植えられてから100年を記念して造った"Frank&Frei"のゼクトです。
初めて試飲の場に出すことにいたします」

名前は「2011 Jubiläumssekt M-Th, 100 Jahre Müller-Thurgau」。
泡が心地よく、スッキリサッパリでまことに飲みやすいゼクト(シャンパン)でした。



2013年はブドウ品種ミュラー・トゥルガウがフランケン地方に植えられてから100年目にあたります。
この節目の年に、ミュラー・トゥルガウを材に取り、「身近で親しみやすいフランケンワイン造り」を目指している「フランク&フライ(Frank&Frei)」のメンバーたちが、何もしないわけはないと思っていました。
しかしマグナムボトルのゼクトとは…意表をつかれました。
(「フランク&フライ」は、フランケン地方の16のワイナリーの共同ブランドです。
シュティヒ醸造所、ルドルフ・マイ醸造所もメンバーに名を連ねています。公式サイトはこちら

肝心のゼクトですが、泡が心地よく、すっきりさっぱりの喉越しで大いに楽しめました。
どこかまろやかな味わいもあり、めったに飲めないものを賞味することができて、満足。

*

ゼクト試飲のあとは、ケラー(Keller、地下貯蔵庫)の案内。
ルドルフさんがグラスを持っていらしてくださいと声をかけると、みなさんゾロゾロあとに続きます。
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(念のため。ルドルフさんの前にはたくさんの人がいます。お顔がバッチリ写っている方がいましたので、トリミングしました)

製造過程の説明のほか、スティールタンクに入っていた新ワインをふるまったりと、ルドルフさん大忙しです。
それでもセカセカした印象を与えないのは、ゆったりした口調と所作ゆえでしょうか。

ホールに戻ると、客はさらに増えています。
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これはサーヴする側からの画像。
多くはこのように立って談笑しながらティスティングをしていますが、奥にはテーブル席があり、座ってゆったりと味わっている人も。
老いも若きも、思い思いにワインを楽しんでいます。
いい雰囲気です。

*

17時に近づいた頃でしょうか、ルドルフさんが再び「ご注目を!」と呼びかけます。
声のほうを振り返ると…ワインの王女さま(Weinprinzessin)がいるではありませんか。
かわいい伝統衣装を身にまとい、プリンセスの象徴ティアラをつけています。本物です。
日本のワインフェストで、遠くからフランケンワインの王女のお姿を眺めたことはありますが、こんな間近で遭遇するのは初めて!

さっそくルドルフさんが「我が村レッツシュタットのWeinprinzessin、カルメン(Carmen)です」と紹介してくれました。
メガネ美人という言葉がありますが、まさにそんな、理知的な感じのお嬢さん。
こちらは年甲斐もなく顔が赤らみ、ワキ汗たらたら(握手をする前に念入りに掌をズボンにこすりつけたのは言うまでもありません)。
平常心を失ってしまった私、せっかくの機会なのに、「ワインプリンセスは一日ボトル一本空けるのがノルマですか?」などとヘンなことを訊いたりしちゃいました。。
義務ではありませんがときどき一本イッちゃいますと笑って返してくれたので助かりました。。
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この会にはもうひとり、ワインの王女さまが出席していました。
隣町レッツバッハ(Retzbach)の2年前のワインプリンセス・アンナ(Anna)さん。
写真の通り、かなりのぺっぴんさんですが、ただキレイというだけでなく、元王女の貫禄といったものを漂わせています。
ワインプリンセスになって良かったことは?と月並みな質問をしたところ、交友・行動範囲がはるかに広がったこと、と即答です。
おかげでベルリンにも行くことができました、と当時を思い出したのか、一段と目を輝かせていたのが印象に残りました。

* * *

しかしながら、この会で、私の心に忘れがたく刻まれたのは、マイ醸造所のワインを愛する方々との語らいでした。
ルドルフさんが私を挨拶で紹介してくれたあと、何人かの方々が話しかけてくださったことが、今でも忘れられません。

「フランクフルトでいい仕事してるイヌイ(乾貴士)って日本人選手いるでしょ?
彼の前の所属チームはボーフムだって覚えてる?俺そこの出身だから注目してるんだ!」


といったサッカー話、特に日本人選手の話は、ありがたかったです。
なぜならこの話題になると、何時間でも話していられますし…日本代表主将・長谷部誠選手をはじめ日本人ブンデスリーガーたちに感謝しなければいけませんね。

*

日本を訪ねたことがあるという方も、おふたり。

「ニッコーってところに行ったんだが、あそこはサルがいっぱいいたなあ」

と言うので、目・耳・口を順番に押さえるジェスチャーをしたところ、手をたたいて笑い「おお、それそれ~!」

別のおじさまは、

「東京じゃなく名古屋に滞在したことがあります。あのヌードル…なんていったっけ?」

きしめんですか?と答えたら、「そうそう、メンの幅が広くて変な感じがしたけどシンプルで美味しかったです」と懐かしそうな顔をなさっていました。

*

でも、やはり多かったのは、やはりフランケンワイン関連の話題。

「フランケンワインは日本では人気があるのですか?名の通っているワイン?それとも一部の人しか知らないワイン?」

といった「日本におけるフランケンワイン受容の現状」については、何回も質問を受けました。
ドイツワイン全体の輸入量が年々減少していて、現在は国別割合でドイツは輸入量全体の2%程度です、こうした現状ですので、フランケンワインの知名度も決して高くはありませんと答えると、おおと悲しげな顔をされ、

「それではあなたがフランケンワインのスペシャリストになって、うんと普及につとめなければなりません。
私たちの愛するワインの素晴らしさを、ぜひ日本の方にも知ってもらわなくては!」


と、鼻息荒くハッパかけられたりしました。

みなさん、レッツシュタットおよびその近郊、すなわちフランケン地方を故郷とする方々がほとんどです。
世界に通用するこの地のワインに、大いなる愛情と誇りを抱いておられることが、よくわかりました。

*

他には、マイ醸造所に関すること。

「マイんところのワインは売れてるかい?わしは○○や●●よりも旨いと思うぞ!」
(○○と●●は、ともにフランケン地方の大手醸造所。名は伏せます)

ええ、よく売れてます、特にジルヴァーナーのシュペートレーゼ辛口は、早々と売り切れてしまいましたと答えると、得意そうに鼻の穴をプクッとふくらませ、右手の親指をピンと立てたおじいさん、

「日本の人たちもお目が高いわ!わしもあのワインが一番のお気に入りじゃ!」

と手放しの喜びよう。
そして一転、真顔になってこうアドバイスをくださいました。

「いいか日本のお方、○○や●●のような大手から買わんほうがいい。家族経営の醸造所から買うべきじゃ。
こういう小さなワイナリーでこそ、丁寧に造られたワインを買うことができるんでな」


アドバイスを聞きながら、私は25日に訪問したビュルクシュタットのシュティヒ醸造所のことを思い出していました。
収穫したブドウの選別は機械に頼らず手作業でやってます、終わる頃には掌が赤くなってしまうんですとヘルガさんは言ってたっけ。
ルドルフさんにそこら辺の話は聞きませんでしたが、マイ醸造所でも事情は同じと思います。
こうした醸造所こそ大事にしなければならないと、このおじいさんに教えられた気がします。

*

今、書き起こしているだけで、話しかけてくださった人たちのことを思い出し、胸がジーンとしてきます。
加えて、会話も交わしていないのに、帰る際に私に近づき「よい滞在を!」と告げ、別れの握手を求めてきた人が何人もいました。

みなさん、本当によくしてくれて、ありがとう!

Vielen, vielen Dank, alle netten Leute bei der Jahregangspräsentation am 28. April!
Ich werde Sie nicht vergessen!

* * *

終了時間の19時近くになると、だんだん人も少なくなってきました。
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堪能させてくれたワインも片づけを待つばかりになりました。

残っているお客さんの中に、車でヴュルツブルクに帰るというご夫妻がいたので、同乗させていただくことになりました。
ご主人は結構飲んでいたので心配でしたが、運転するという奥さんは「全然飲んでません」と笑っているので一安心。

別れのときがきました。
名残惜しいです。

ルドルフさんに劣らずホール内をあちこち動き回っていた奥さんのぺトラ(Petra)さんが手を差し伸べてきます。
ホストの大役、お疲れさまでした。
もっとお話したかったのですが、それは今度のお楽しみとします。

「あなたとお知り合いになれて嬉しかったです、良いご旅行を!」

ありがとうございますと頭を下げ、隣のルドルフさんにも握手を求めます。
そのとき、ルドルフさん、こう言いました。

「あのねえ、もう、オレとオマエの仲でいかないか?」

おお、duzenです。
もう敬称など使わず呼び合おうよという申し出です。

うん、喜んでと私が答えます。
するとルドルフさん、嬉しそうに、

「OK、じゃこれからオレのことはルディ(Rudi)と呼んでくれ。
で、オマエのことはなんて呼べばいいんだ?」


*

それから30分もたたないうちに、私はヴュルツブルクに戻ってきました。
たどり着くまであれほど時間がかかったルドルフ・マイ醸造所なのに、クルマを使えばこれだけしかかかりません。

快くクルマにのせてくださったご夫妻を見送ったあと、ゆっくりとホテルに向かって歩き出します。
ゆっくり歩きながら、今日一日のことを考えました。
ふと立ちどまり、目を閉じると、ついさっきまでいたレッツシュタットのブドウ畑が脳裏に浮かんできます。
ルドルフ・マイ醸造所のすぐうしろも、畑でした。
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まったく、めったにない一日でした。

*

その2時間後、Facebookにさっそく今日の会の画像がアップされているのを知りました。
仕事がはやいな、ルディ。
思わず笑みが浮かびます。

あそこにいたことは夢ではなかったんだと思いながら、コメントを書き込んで、長い一日が終わりました。


(4月28日、了、12593歩)

by marienberg | 2013-05-26 23:59 | ドイツ出張記


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